WolfgangMittwoch ドイツのこと

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ビル・ゲイツによるパンデミックへの警告

 今、ドイツのSPIEGEL ON LINEで最も読まれているのは「パンデミック 忘れられた危機(Die Vergessene Gefahr)」である。

 

www.spiegel.de

 2017年1月の世界経済フォーラムMicrosoftの創業者ビル・ゲイツが「バイオテロ」が引き起こされる危険性について警告した。ここ10~15年までに3000万人の死者をもたらす可能性があるとゲイツ氏は注意を喚起する。

 2月17日よりミュンヘン安全保障会議の国際シンポジウムが開催されており、ゲイツ氏はその場で改めて感染症バイオテロの危険性について警告したことにより注目を集めているようだ。

 ゲイツ氏は文明全体を根底から覆す危険として3つを挙げる。

1.核戦争、2.気候変動、3.感染症

1に対して人類は十分な注意を払い対応しようとする。2は1ほどではない。3は最も関心が薄く、忘れられる傾向にある。SARS鳥インフルエンザ豚インフルエンザなど、比較的近年の感染症は騒がれた程の実害には至らなかったものもある。しかし同じように続く保証はない。

 1918年のスペイン風邪は世界で5000万人の死者をもたらした。これは第一次世界大戦の犠牲者(900万~1500万人とされる)より多かった。戦争よりも多くの犠牲者を生んだ感染症は人々の渡航の多さによって引き起こされた。現代にあって、人々の移動は当時の比較にならないほど増えている。したがって、感染症への備えが核戦争や気候変動と同じまたそれ以上に必要であるとゲイツ氏は考えている。

 2016年に公開されているエボラウィルスへの対応をまとめたWHOのレポートは193の国家のうち63しか疫病に対抗する準備がないことを示していると言う。

 加えて科学研究に敵対的なトランプの政策が事態を悪化させる恐れがある。選挙後の12月にゲイツはトランプ大統領に会う機会があり、予防接種の重要性を伝えたそうだ。

 米国は7カ国の入国制限を大統領令により行っている。記事は感染症が国境を守らないこと、入国制限もできないと締めくくる。グローバル化感染症にあって政策でも経済的決断でもなく、端的な事実である。そのために国際的協調が好むと好まざるとに関わらず、不可欠であることを記事は主張していた。